【なぜプログラミング教育が必要なのか?】必修化のねらい(育む資質と能力)【小学校】

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なんでプログラミング教育を必修にするのかしら?

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されました。
文部科学省によると、小学校でのプログラミング教育の目的は「時代を超えて普遍的に求められる力」である「プログラミング的思考」を育むことであるとしています。

これは、プログラミング言語を覚えたり、プログラミングのスキルを習得することを目的とするのではなく、プログラミングの考え方に基づいた「効率よく問題を解決するための思考方法」を身につけることによって、より良い社会を築くことを目指しています。

この記事では、小学校でプログラミング教育を必修化する背景や理由と、プログラミング教育によってどのような資質や能力を身につけることができるのか?について説明しています。

本記事の内容は、「小学校プログラミング教育に関する資料文部科学省による行政説明資料)」(文部科学省) より、一部編集・加工して作成しています。

新たな社会「Society5.0」の到来

すでにSociety5.0社会への移行は始まっています。

  1. Society1.0【狩猟社会】
  2. Society2.0【農耕社会】・・・第1次産業革命(軽工業)
  3. Society3.0【工業社会】・・・第2次産業革命(重化学工業)
  4. Society4.0【情報社会】・・・第3次産業革命(自動化・情報化)
  5. Society5.0【????】・・・第4次産業革命(デジタル革新)

今後、IoT・ビッグデータ・人口知能(AI)・ロボットなどをはじめとする第4次産業革命ともいわれる技術革新が一層進んだ世の中になっていく予想が立てられています。

そこでは、サイバー空間(仮想)とフィジカル空間(現実)を高度に融合させたシステムによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する人が中心となる社会となっていく想定です。

つねきち
つねきち

経済発展と社会的課題の両方を解決するビジネスモデルは、ソーシャルビジネスといわれており社会起業家の方々がすでに取り組みをはじめています。

今後、デジタルと社会はどんどん密接に発展していき幅広い産業でデジタルを中心として変革が進んでいくので、間違いなく人々の働き方やライフスタイルなどがどんどん変化していきます。

「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」
マイケル・A・オズボーン准教授: ※英・オックスフォード大学

「人工知能の発展で2045年以降は人間の脳では予測不可能な未来が到来する」
レイ・カーツワイル: ※米 発明家、未来学者

『予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い・関わり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるための力を子どもたちに育む学校教育の実現を目指す』ということが、文部科学省の学習指導要領改訂の方向性として書かれています。

これから予測できない変化がやってくるが、よりよい社会のために創り手として力を発揮することが期待されています。

技術革新の急速な進展(予想)
  • 2022年頃~
    ロボットの社会進出
    • 介護・料理・掃除ロボットが活躍
    • ロボットが買い物を代行
    • 工場でAIロボットが作業
  • 2022~2027年頃
    人体とコンピューターの融合
    • コンタクトレンズ型ディスプレイ
    • 血管内を移動する医療ロボット
    • 頭の中で念じるだけでコンピューターを操作
    • 機械を装備して身体能力を補強
  • 2025年頃
    技術で言葉の壁が消滅
    • 言語の壁を越えたコミュニケーション
    • 動物との会話が実現
  • 2025年頃~
    AIが人の代役となる
    • 民事の調停案AIが提示
    • バーチャル俳優が映画などにデビュー
    • 歩行者と車が直接やりとりすることで信号が事実上不要に
    • AI秘書やAI教師が採用
    • 仕事の49%がロボットやAIに置き換え可能に
  • 2030~2040年頃
    人と機械が共存・強調する社会
    • 体内へのデバイス埋め込みが実現
    • 着るだけで体調管理できる衣服が普及
    • 空飛ぶタクシーが増加
    • ドローンを使った配送が拡大
    • 自分の考えを視覚や聴覚以外の手段で他人の脳に伝達
  • 2045年頃
    AIが人を超える(シンギュラリティ
    • AIが人の代わりに知的労働を行う
  • 2050年頃
    宇宙への進出
    • 宇宙旅行の普及
    • 宇宙エレベーターの実現

情報活用能力の育成とプログラミング教育

文部科学省では、学校教育における情報教育・ICT活用教育関係のポイントを以下のようにまとめています。
※ICT:Information Communication Technologyの略(≒情報コミュニケーション技術)

小・中・高等学校共通のポイント

  • 情報活用能力を、言語能力と同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け
  • 学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実を明記

小・中・高等学校別のポイント

  • 小学校:文字入力など基本的な操作を習得、新たにプログラミング的思考を育成
  • 中学校:技術・家庭科(技術分野)においてプログラミングに関する内容を充実
  • 高等学校:情報科において共通必履修科目「情報Ⅰ」を新設。全ての生徒がプログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学習

ここでいう「情報活用能力」とは、情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的な力、と明記されています。

小・中・高等学校のいずれにおいても、情報を活用する能力は言語能力と同じく学習の基盤として位置づける、小・中・高等学校を通じてプログラミングに関する教育を充実させていく、そのために学校現場の環境を整備していく、としています。

また、情報活用能力の育成のためには、単にプログラミング教育を充実し「プログラミング的思考」を育めばよいということではなく、情報を収集・整理・比較・発信・伝達する等の力をはじめ、情報モラルや情報手段の基本的な操作技能なども含めたトータルな情報活用能力を育成する中に、「プログラミング的思考」の育成を適切に組み入れていくことが必要です。

分類説明具体例
情報活用の実践力■課題や目的に応じた情報手段の適切な活用
■必要な情報の主体的な収集・判断・表現・処理・創造
■受け手の状況などを踏まえた発信・伝達
ICTの基本的な操作、情報の収集・整理・発信(文字入力、インターネットなど情報手段の適切な活用等)
情報の科学的な理解■情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解
■情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解
プログラミング(コンピュータの仕組みの理解等)
情報社会に参画する態度■社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響の理解
■情報モラルの必要性や情報に対する責任
■望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度
情報モラル(情報発信による他人や社会への影響、危険回避等)

小学校にプログラミング教育を導入する理由

今やスマホや家電、ゲーム機や自動車など、身近な多くのものにコンピューターが内蔵されているおかげで、私たちの生活はどんどん便利で豊かになってきています。

コンピューターをより適切に効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることがとても重要です。コンピューターはプログラムで動いています。その仕組みを知るということは、コンピューターを使って動いているモノやサービスの仕組みを理解し、より主体的に活用するということにつながっていきます。

それらを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、あらゆる活動においてコンピューター等を活用することが求められるこれからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても極めて重要になっていきます。

今の子供たちは、生まれたときからIT技術が存在しており、生粋のデジタルネイティブ世代にあたります。西暦2000年以前に生まれた世代とは、全く異なる環境で育っており全く異なる価値観を持っているはずです。

小さい頃から当たり前のようにIT技術に触れてきたデジタルネイティブ世代の子供たちが、プログラミング教育を学ぶということは、Society5.0社会を生きる子供たちにとって将来の可能性を広げることにつながります。

たとえば、プログラミングの能力を開花させ海外で先進的な技術を学ぶ者、創造力を発揮して起業する若者、IT技術を使って特許を取得する子供だって登場するようになってくるでしょう。

小学校プログラミング教育のねらいと育む資質・能力

文部科学省は、小学校のプログラミング教育のねらいと育む資質・能力について、「小学校プログラミング教育の手引」の中で以下のようにまとめられています。

ねらい

  • 「プログラミング的思考」を育む
  • プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付く
  • 身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育む
  • 各教科等の内容を指導する中で実施する場合には、教科等での学びをより確実なものとする

ここでは、プログラミングに取り組むことを通じて、児童がおのずとプログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりするといったことは考えられるが、それ自体をねらいとしているのではない、とも明記しています。

育む資質・能力

知識及び技能

  • コンピュータに意図した処理を行うよう指示をする活動を通して、「コンピュータはプログラムで動いていること」「プログラムは人が作成していること」「コンピュータには得意なこととなかなかできないこととがあること」「コンピュータが日常生活の様々な場面で使われており生活を便利にしていること」「コンピュータに意図した処理を行わせるためには必要な手順があること」などへの気付く力。

学びに向かう力・人間性等

  • 「身近な問題の発見・解決にコンピュータの働きを生かそうとする」「コンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとしたりする」というような主体的に取り組む態度や「他者と協働しながらねばり強くやり抜く態度の育成」「著作権等の自他の権利を尊重したり情報セキュリティの確保に留意したりする」といった情報モラルの育成。

思考力・判断力・表現力等

  • 自分が意図する一連の活動を実現するために、「どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか」といったことの論理的思考力。

プログラミングに関する学習活動の分類と指導の考え方

小学校のプログラミング教育における学習活動の分類は以下のようになっています。

分類考え方
教育
課程
学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの各教科等での学びをより確実なものとするための学習活動としてプログラミングに取り組むもの。
学習指導要領に例示されてはいないが、学習指導要領に示される各教科等の内容を 指導する中で実施するもの学習指導要領に例示されていないが、各教科等での学びをより確実なものとするための学習活動としてプログラミングに取り組むもの。
教育課程内で各教科等とは別に実施するもの各教科等とは別に(何らかの教科等に位置付けることなく)、かつ教育課程内で実施するもの。この場合、児童の負担過重にならないことを前提として各学校の裁量で行うこととなる。
クラブ活動など、特定の児童を対象として、教育課程内で実施するもの教育課程内で、クラブ活動など特定の児童を対象として実施されるもの。
教育
課程
学校を会場とするが、教育課程外のもの学校の教育課程に位置付くものではないが、地域や企業・団体等においてこれらの学習機会が豊富に用意され、児童の興味・関心等に応じて提供されることが期待されるところ。学校においても、児童の興味・関心等を踏まえ、こうした学習機会について適切に紹介するなど、相互の連携・協力を強化することが望まれる。
学校外でのプログラミングの学習機会

コンピュータを用いずに行う「プログラミング的思考」を育成する指導についても不可能ではないようですが、学習指導要領では児童がプログラミングを体験することを求めており、コンピュータをほとんど用いないということは望ましくない、とされていることには注意が必要です。

つねきち
つねきち

「プログラミング的思考」を育成するには、とにかくプログラミングに触れることが有効な手段であるということですが、実際に私もそう思います。プログラミングを避けて通ることはできなくなっていますね。

小学校プログラミング教育に向けた環境整備

小学校プログラミング教員研修用教材

小学校プログラミング教育に初めて取り組む教員を含め、プログラミング教育を担当する教員が、プログラミング教育の概要やプログラミング教育行う際に必要となる基本的な操作等を学ぶことができる「映像教材+テキスト教材」が、文部科学省のホームページで紹介されています。

教材項目

  • 小学校プログラミング教育の概要
  • プログラミング教育を行う際に必要となる基本的な操作等に関する教材
    Scratch:正多角形をプログラムを使ってかく
    Scratch:ねこから逃げるプログラムを作る
    Viscuit:たまごが割れたらひよこが出てくるプログラムを作る
  • 小学校を中心としたプログラミング教育ポータルに掲載されている実践事例について

ICT環境整備5か年計画(2018年~2022年度)

文部科学省では、新学習指導要領の実施に向けてICT環境の整備方針を取りまとめて2022年までの5か年計画を策定しています。また、必要な経費についても予算計上のうえ地方財政措置を講ずることとされています。

目標とする水準

  • 学習者用コンピューター:3クラスに1クラス分程度整備(1日1コマ分程度1人1台使用可能)
  • 指導者用コンピューター:授業を担当する教師1人1台
  • 大型提示装置・実物投影機:100%整備(各普通教室1台、特別教室用6台)
  • 超高速インターネット及び無線LAN:100%整備
  • 統合型校務支援システム:100%整備
  • ICT支援員:4校に1人配置
  • その他:学習用ツール(ソフト等)、保管室、サーバー環境、セキュリティソフト等整備

まとめ

今回は、小学校でプログラミング教育を必修化する背景や理由と、プログラミング教育によって身につけることのできる資質や能力について説明してきました。

ポイントをまとめると以下のようになります。

  • 今後、幅広い産業でデジタル変革が進んでいくため、コンピューターの活用は将来どのような職業に就くとしても極めて重要である。
  • プログラミング教育を通じて「プログラミング的思考」を育み、「知識・技能」「人間性等」「思考力・判断力・表現力等」を養う。
  • プログラミングに触れることが、最良の手段である。

プログラミングの世界は、とにかく自由度が高くて何でもできてしまいます。幅が広く奥も深いということでもあります。自由度が高いがゆえに、やりたいことが増えるたびに覚えることも増えていく、という世界です。

わたしのように若い頃からコンピューターやプログラミングに触れてきた人間から見ても、大人になるまでプログラミングには全く触れたこともない小学校の先生方が、いきなり子供たちにプログラミング教育を、と言われても、よほど趣味などでやったことがなければおそらく教える側に立つのは難しいと思います。自分自身の経験からそう思います。

そんなプログラミングの教育に、先生方が足を踏み入れるには、ある程度フレーム(枠)をはめて自由度を制限していかないと、先生自身の時間がいくらあっても足りないということになると思います。そういうことのために国が学習指導要領を策定していると理解してます。

そのため、文部科学省の指導要領の内容を行っていれば、プログラミング教育に関しては十分かというと全くそうではありません。これはあくまでもきっかけに過ぎず、活用できるレベルまでには全然足りないと思います。

不十分な点については、ご家庭でさらに伸ばしてあげるか、スクールに通うか、自分自身で取り組むか、いずれにしても何かを使う側ではなく何かを作る側に立った学習の強化が必要だと考えます。

ぜひ早い段階からプログラミングに興味・関心をもって取り組んでいただけたらと思います。

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